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特定秘密保護法の参議院での審議経過と法律の根本的な問題(2013/12/10)


特定秘密保護法が成立しました。この機会に、参議院での審議経過と法律の根本的な問題をまとめて報告したいと思います。

(特定秘密保護法への評価には条文理解が不可欠)
まず、ネット上では同法について、保守系新聞等の報道をもとに「国家安全保障上必要なもの」との思い込みから、楽観的な発言をする人が数多く見られました。しかし、同法は、法案に記された趣旨(目的)は妥当ながら、民主主義に不可欠な「知る権利」を脅かすという致命的欠陥を内包しています。米国国務省からは成立を評価するコメントがなされる一方、欧米各国から「同趣旨の各国法律が具備する要件(=知る権利の保障)を備えていない」と危惧する発言が相次いだのはそのためです。同法を正しく評価するには逐条毎の読込みと分析が欠かせません。この過程を踏まえていない発言は論評に値しないもの、と私は考えています。以下、「審議の経過」と「法律の根本問題」の二回に分けて報告します。

審議の経過

(参議院審議におけるキーマン)
さて、参議院での審議は「安倍政権はかくもファシズムの要素をもつのか」と危惧させる異常さでした(1930年代にナチスドイツが独裁政権を確立した過程を彷彿とさせました)。審議における政府与党のキーマンは3人。同法を起案した内閣官房の責任者である菅官房長官、答弁を担当した森雅子大臣(参議院福島県選挙区、風間と当選同期)、そして同法が審議された「国家安全保障に関する特別委員会」の中川雅治委員長(自民党、大蔵省出身、元環境事務次官)です。

(特別委員会理事会運営の異常さ)
まず理事会で明らかになった問題です。衆議院から遅れて送付された同法を会期内の限られた日数で成立させるため、中川委員長は委員会に先立つ理事会(役員会)で、野党の理事たちに発言を一切行わせませんでした。理事会で野党理事が発言できないという事実は、極めて異常なのです。理事会は、委員長が委員会運営の方針を諮り、各党理事から同意を得、民主的な議論の実施を確認する場です。つまり各党が議席数に応じた配分時間内で質疑を行い、質問者が求めた大臣が答弁することが、この場で保証されるのです。このプロセスは、投票で議員に託された民意を国会質疑に反映するために行なわれます。国会が憲法上「国権の最高機関」とされるのは、国民の直接投票で選ばれた代表が国会議員であり、議員が民意を代弁し国政に反映する場が国会だからです。中川委員長の理事会運営は、民意を無視し圧し潰す行為だったと言えるでしょう(会期末、連日理事会運営に抗議を続けた野党理事たちの声は枯れ果てていました)。

(小野二郎議員の吐露)
 この中川委員長の運営を痛烈に批判し、真実を吐露したのが小野次郎議員(みんなの党
理事)です。小野議員は中川雅治委員長問責決議案賛成討論(12月6日参議院本会議)で、その「人並み外れた記憶力」に敬意を表しながらも、民主主義思想を欠いた政治家として中川氏を痛罵、理事会・委員会の事情を詳らかにしました。

(委員会審議における問題)
次に委員会審議で明らかになった問題です。第一に菅官房長官の、内閣官房の責任者であるにも関わらず答弁を忌避した問題。第二に森雅子大臣の答弁担当大臣としてのお粗末さ。そして第三に、憲法で保証された人権と相容れない法案内容。ここでは二ついて記したいと思います。

(答弁ができない担当大臣)
森大臣の答弁は、いくら聞いても法案の内容理解が深まらないものでした。おそらくご本人も何を答えているのか理解していなかったろうと思います。とは言え、法案の理念、条文、骨格が、民主主義国の国会に提出される内容に到底満たないものゆえ、その惨状も当然だったかもしれません(法案起草は内閣官房が担当、磯崎陽輔総理補佐官(参議院議員)が監修)。答弁の著しい乱れに、安倍総理が苦い表情を浮かべ森大臣を睨む姿が印象的でした。法案の不明点を野党議員が質問する、しかし不備な法案ゆえ大臣は答弁ができない。審議はこの堂々巡りです。議論を重ねても法案不信は深まるばかりですから話になりません。本来ならこうした法案は「国会審議がもたない」とされ、廃案か継続審議になるのですが、会期末までに上げろという「圧力」を総理官邸がかけるため、与党国対は焦り無理を重ねる。野党は更に反発する。会期末の6日、採決を逡巡する山崎政昭議長(自民党)に、自民党国対は参議院事務局を通し「今日中に採決しなければ議長の首を取りにいく」と迫った、という報道までありました。でも正直なところ、彼らも何のために無理をしているのか、最後は分からなかったのでは。

(法案採決を急いだ事情)
自民党国対に「圧力」をかけた総理官邸の理由。NSC発足に併せ、米国等から寄せられる機密情報管理のために同法がどうしても必要だったのだろうと私は察しています。とは言え、国民の知る権利を大幅に制限しつつ「安全保障のために必要」と胸を張るのは、政治家として「知る権利」の大切さを鑑みない未熟さを露呈するもの。法案作成段階で、特定秘密濫用をチェックする仕組みを導入する配慮が不可欠だったはずです。

(大門実紀史議員の喝破)
ところで、こうした強行審議の背景事情を明らかにしたのが、大門実紀史議員(共産党理事)の討論でした(12月6日 参議院本会議
森雅子大臣問責決議案賛成討論)。大門議員はかつて共に法案成立に汗を流した森議員の資質を高く評価する一方で、なぜ森氏が担当大臣を引き受けざるを得なかったのか、そしてなぜ無理な審議日程が組まれたのか、その事情を的確に解きました。大門氏が討論の終盤に指摘した「森大臣が問責に値する唯一の原因」は、弁護士・政治家として森氏の矜持を問うもので、その肺腑を抉る指摘だったことでしょう。深情と真理が宿る演説は党派を問わず議員の胸に響き、議場に静寂をもたらします。国会史上に残る演説でした。(以下、続く)

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