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国会質問レポート

Report

2018.12.6 財政金融委員会 質疑


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https://www.youtube.com/watch?v=39LXRq4V_PI

 

【議事録】

○今日は久しぶりに黒田総裁との質疑、よろしくお願いします。
最初に総裁に伺いますが、ちょっと細かい数字は後にしまして、量的緩和政策始めてから五年がたちましたが、なかなか物価が上がりません。そろそろこの金融をめぐる論壇、いろんな論考を読んでいましても、将来の日銀の財務ですとかあるいは国家財政に対する影響を心配する指摘が随分出てきております。
そこで、今日は最初に総裁に、この五年間の金融政策を受けてなぜ物価が上がっていないのか、その理由を端的にお尋ねしたいと思います。一時は原油価格の低迷がその理由だという説明をされていたわけですけれども、最近随分原油価格も上がってきました。現在、この物価が上がらない原因をどのように認識されていらっしゃいますでしょうか。

○参考人(黒田東彦君) この点につきましては、展望レポートあるいは金融政策決定会合後の公表文、さらには私の記者会見等でも繰り返し申し上げておりますけれども、現時点で一番大きな要因としては、幾つか挙げられると思いますが、一つは、賃金が、労働需給が引き締まっている割にはやや弱めの上昇にとどまっていると。もちろん雇用はどんどん増えていますので雇用者所得は増えているわけですけれども、時間当たり賃金の、あるいは年俸の上昇率が労働需給の引き締まりに比べるとやや弱めであるということが一つあります。
それからもう一つ、さらには、そういうことがあっても賃金コストは上がっているわけですけれども、それを価格に転嫁するということを、特に労働生産性がこれまで国際的に見て低かったサービス産業を中心に様々な省力化投資、あるいはビジネスモデルの見直し等によって労働生産性を上げているわけです。最近のG7の中では日本の労働生産性の上昇率が一番高いというふうに言われていますけれども、それ自身は非常に好ましいことであるわけですけれども、当面、賃金コストの上昇を価格に転嫁しなくて済むということでもありますので、労働生産性の上昇率が非常に高くなっているということが物価がやや上がりにくくなっているというもう一つの要因であろうと思います。
そして、さらにもう少し長い目で見て全体を見ますと、やはり先ほど冒頭申し上げたとおり、企業の側で賃金あるいは価格の上昇について非常に慎重な対応をする、さらには家計の方も価格の引上げについて慎重な対応をするということが、言わば一九九八年から二〇一三年まで十五年間デフレが続きましたので、一種のデフレマインドというか、そういうものがやや根強く残っているということもあろうかと思います。
様々な要因があろうと思いますけれども、そういうことを含めて物価の上昇率が、実体経済の好調な状況、あるいはGDPギャップもプラスになり、雇用もほぼ完全雇用という状況にありながら、物価が現在一%程度の上昇というところにとどまっているということではないかと思いますが、これも冒頭申し上げたとおり、プラスのGDPギャップを続けることによってこのモメンタムが更に強化されて、徐々に二%に向けて物価上昇率が高まっていくというふうに見ておるところでございます。

○風間直樹君 仮に、この物価上昇率が上がらずなかなか二%に到達しないという場合、総裁のお考えではどういう弊害なり悪影響が日本の経済にあるいは日銀の財務に及んでくるのか、その辺はいかがでしょうか。

○参考人(黒田東彦君) まず、経済自体につきましては、金融緩和が大幅でかつ長く続いた場合の一般的なあり得る問題としては、金融機関を中心に収益率が低下する可能性があると。その場合には、金融機関の方がいわゆる金融仲介機能を十分に果たせなくなるという、あるいは果たさなくなるという影響、あるいは逆に、そういう下でややもう投機的というか、リスクを十分考慮しないでリスクを取り過ぎるといった問題が生じ得るということは一般的に言われているわけであります。
ただ、足下で、金融システムレポートを年に二回公表しておりますし、展望レポートでもかなり詳しく触れておりますけれども、現時点で日本の金融機関が金融仲介機能を低下させているという状況にはないと。銀行の貸出しも三%前後で増加しております。
また、他方で、金融の行き過ぎがないかというのは、これもまた相当詳しく分析しておりますけど、今のところそういった金融面の行き過ぎというものも見当たらないということでありますので、長い目で見た場合に金融システムに対する影響というものを十分考慮していかなければならないということはそのとおりでありますけれども、現時点ではそういった状況になっているというふうには考えておりません。
なお、日本銀行の財務に対する影響につきましては、こういった大幅な緩和を大量の資産の買入れで行っている時期には日本銀行の収益が拡大するわけですけれども、逆に、出口に差しかかってくるということになると収益が減少するということになるわけでありますので、そういったことに対応するために債券買入れ損失準備金などの拡充を図って、そういった日銀の収益の振れを小さくするような努力もしているというところでございます。

○風間直樹君 金融の仲介機能の低下ということをおっしゃいましたけれども、ちょっと余談ですけど、私、自分がそれをちょっと最近経験したことがありまして、少し前なんですけれども、ある財閥系の都市銀行に自分の普通預金口座を開設しようと思いまして、久しぶりに、丸の内の方の支店に出かけたんです、ある財閥系都市銀行の。口座開設の窓口に行きまして普通預金口座を開きたいんだと言いましたら、驚いたことに断られました。こういう経験は初めてでした。何と言われたかというと、今はインターネットで普通口座を開設できますのでそちらでやってくださいと言われました。これは事実です。あえてその銀行の名前はここでは申しませんが、非常に衝撃を受けました。ここまで都市銀行がもう預金を欲しがっていないんだなと。これはまさに今総裁がおっしゃった仲介機能の低下ということになるんじゃないかと考えています。
それで、総裁、ちょっと視点を変えまして、では、この物価が二%という水準が達成された場合、この点につきまして、最近随分そのケースでの日銀の財務なり国家財政に与える影響を懸念する論考が出てきています。
それで、私、以前、平成二十七年六月に同じ議論を当時の岩田副総裁としたことがあるんですけれども、このとき岩田副総裁の答弁では、そういうケースでの影響の試算はしているんだと、全く問題がないという認識を持っていると、こういう答弁でありました。
現在も日銀は当然その試算をしていると思うんですが、現状どのような認識を持っていらっしゃるか。この物価上昇率二%に達した場合、つまり長期金利が上がりますから、それが日銀の財務なり国家財政に与える影響というのはやはり問題ないという認識でいらっしゃるのか、その点、簡単に御答弁お願いします。

○参考人(黒田東彦君) 先ほど申し上げたとおり、量的・質的金融緩和というものは、実施中はバランスシートの拡大によって収益が押し上げられる一方で、出口の局面では例えば日銀当座預金に対する付利金利の引上げなどによって収益が減少しやすいという特徴がございます。
もっとも、将来、経済・物価情勢が好転して日本銀行がこの付利金利を引き上げる場合には、長期金利も相応に上昇すると考えられますので、当座預金に対する支払利息が増える一方で、日本銀行の保有国債についてはより高い利回りの国債に順次入れ替わっていくということで、受取リスクは、受取利息は増加することになるわけでございます。
このように、出口の過程における収益面の影響というものは、受取リスクも含めたバランスシート全体について考える必要があるということでございます。
その上で、先ほど申し上げたとおり、日本銀行は、二〇一五年度から、収益の上振れの局面ではその一部を積み立てて、収益が下振れる局面では取り崩すことができるように、債券取引損失引当金を拡充したわけでございます。こういったことで、事前の対応としては十分な対応ができているというふうに考えております。
なお、長期金利その他様々な金融市場の変動によって日本銀行の財務にどのような影響が与えられるかということについては、内部的には確認を行っておりますけれども、具体的にどのようになるかということについては、先ほど来申し上げているとおり、そもそも出口で、どういう出口戦略で行うかと。
それは、当然のことながら経済・物価情勢あるいは金利環境に依存するわけですので、その結果としての日銀の収益あるいは財務についての影響も変わり得るわけでございまして、二%の物価安定の目標の実現になお時間が掛かるということを踏まえますと、具体的な出口戦略、様々な手段の順序とかやり方、さらにはその結果としての財務、収益に関する先々の状況を現時点で具体的に示すということは、かえって市場との対話でも混乱を招くおそれがございますし、言わばいろんなことがあり得るということにすぎないわけでございますので、やはりもう少しこの二%の物価安定目標の実現に近づき、そして出口戦略を金融政策決定会合で議論し、それを市場に発信していくという中で、日銀の財務に対する影響についての議論も具体的にできるのではないかというふうに考えております。

○風間直樹君 時間になりましたので、終わります。また次の機会に続けたいと思います。