参議院議員 風間直樹 公式ホームページ

国会質問レポート

Report

2018.12.8 本会議 登壇


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【議事録】

○立憲民主党・民友会の風間直樹です。
私は、会派を代表し、漁業法等の一部を改正する等の法律案に反対の立場から討論いたします。
近年、我が国における漁業を取り巻く環境は大変厳しいものとなっています。水産資源の減少による生産量や漁業者数の減少、人口減少による消費への影響など、課題が顕在化しています。このため、水産資源の持続的な利用を確保し、漁業者の所得向上を図るという改革の目的には賛成するところですが、改正内容には大きな問題があります。
また、漁業制度を根本から見直すことになる七十年ぶりの大改正を行うのであれば、臨時国会で急いで成立させるのではなく、慎重に審議することが求められるところです。ところが、与党による採決日ありきの委員会運営がなされ、審議時間が十分に確保されず、議論が十分に尽くされないままでした。農林水産委員会において参考人質疑は行われましたが、審議は僅か二日です。結論ありきの乱暴な国会運営で、我が国の漁業、漁村の未来を左右する重要な法案を通してしまっては、将来に禍根を残すことになるでしょう。
また、改正案に関する漁業者への説明が十分行われたとは言えません。法律案の内容は、現場の漁業者一人一人に本当に伝え、理解してもらえているのでしょうか。そうとは思えません。水産庁は水産改革や改正案について全国で説明会を行ったとしていますが、十分な理解が進んでいるとは到底思えません。この改正案は、誰のため、何のために提出されたものなのでしょうか。
改正案の発端となったのは規制改革推進会議です。最近の農林水産委員会では、現場の実情を十分に把握していない規制改革推進会議の提言を基にした法律案が非常に多く提出されてきています。この改正案が、漁業者の意見を丹念に聞いたものとも、漁業者の目線に立ったものとも到底思えません。浜のことを十分に理解することなく、水産業の成長産業化の名の下に、効率を優先し、企業参入を容易にするために作られた法案です。
第一の反対の理由は、漁業の民主化という、これまでの漁業法が七十年間大切にしてきた理念がなくなってしまうことです。
まず、目的規定から漁業の民主化を図るとの文言が消えてしまいました。さらに、漁業の民主化に重要な役割を果たしてきた海区漁業調整委員会の公選制が廃止されてしまいます。これまで、海区漁業調整委員会の漁民委員は、そこに住む漁業者の中から選挙によって民主的に選ばれておりましたが、改正案では、知事が議会の同意を得て任命する仕組みになります。
公選制の廃止は、漁業法が守り続けてきた漁業の民主化の理念に逆行するものです。知事の任命により、知事に近い、反対意見を言わないような人物が委員として任命される懸念もあります。また、漁民委員の割合は従来は六割でしたが、これが過半数とされるなど、漁民委員の割合を少なくすることも改正案には盛り込まれています。これでは、漁業者の声はますます届きにくくなってしまいます。
第二の理由は、漁業への企業進出が進み、漁村が衰退するおそれがあることです。
漁業協同組合は、漁村に住む漁業者が加入し、漁場の細やかな調整を行ってきました。改正案では漁業権の優先順位を廃止するとしており、漁業協同組合が漁業権を得ることができなくなることも懸念されます。
改正案では、漁業を適切かつ有効に活用していれば引き続き漁業権が免許されるとしていますが、何をもって適切かつ有効とするか明らかになっていません。適切かつ有効に活用しているかどうかは知事の判断に委ねられるため、知事によって恣意的な運用がなされ、地元の漁業者よりも企業が優先される危険性があります。
地元の漁業者がその場で漁業を行うことができなくなれば、生業を失い、生活できなくなってしまいます。また、企業が地元の漁業者を雇用する場合であっても、経営不振から撤退することになれば、漁業者は仕事を失い、漁村の衰退が進んでしまいかねません。政府は、自ら漁業を営まない羽織漁師はいなくなり、民主化は達成されたとしています。しかし、この法案が実施されると、今度は企業による支配が進むのではないかと不安でなりません。
第三の理由は、TAC管理による資源管理が基本とされることです。
日本の漁業者は、これまでも持続可能な漁業を営んできました。特に沿岸漁業では、水産資源が枯渇しないよう自主的な取組を行ってきた地域もあります。改正案で基本とするとされているTAC管理は、科学的に効果が十分に立証できているものと言えるのでしょうか。
TAC管理のベースとなる最大持続生産量、MSYは、前年の産卵親魚量によって翌年の資源量が規定されるという親子関係が存在することを前提とする考えです。しかし、この親子関係が明確に存在する魚種ばかりではありません。また、水産資源は、漁獲による影響だけでなく、環境変化等の影響も受けて変化します。また、我が国の漁業は、多種多様な魚種を多様な漁法で漁獲しています。漁獲する魚種が少ない諸外国の漁業で採用されている方法を我が国の漁業にそのまま当てはめることは適切でなく、TAC管理を基本としていくことについては慎重であるべきです。
漁獲割当て、IQについては更に問題があります。
改正案では、船舶の譲渡を伴う場合等にはIQの移転を認めています。IQの移転を認めている諸外国においては、漁業の寡占化が進み、小規模漁業者の淘汰が進むなどの弊害も起きています。
政府は、IQを船ごとに付ける、移転には大臣や知事の認可が必要であるという条件を付し、一定の場合に限り移転を認めていることから、改正案におけるIQの移転は、売買や譲渡を可能とするいわゆるITQとは異なるという立場を取っています。しかし、船舶の譲渡に伴い金銭の授受は当然発生し、船舶の売却額に関する上限も特に法令上設けられていないのでは、実質的には船とともにIQが売買されたと言えるのではないでしょうか。
ノルウェーでは、IQを販売し、資金を得た漁業者が都市に移住するということも起きています。IQを手放した漁業者は、地元での漁業権を失えばそこを出ていってしまうことも十分考えられます。これにより漁村の衰退が進んでしまいかねないことから、IQの移転は到底認められません。
また、IQの実効性の担保にも課題があります。
改正案では、資源管理はTACとIQを基本原理とするとしています。漁業者全てが納得できる公平公正な割当てができるのか、疑問は解消されていません。IQの実施に当たっては、IQの割当てを受けた船舶がそれぞれ割り当てられた量を守っているか監視する必要があり、そのコストは膨大になります。
第四の理由は、企業の参入により、多面的機能の維持、発揮に支障が出てくる懸念があることです。
漁業は、食料を供給するという機能にとどまらず、国境監視機能等の多面的機能を有しています。漁業権が漁協でなく企業に免許されるようになれば、外国資本の企業が漁業権を得ることも可能となり、領海、国境が外国人によって実質的に支配されることも懸念されます。これだけではなく、漁村の人々による清掃や植林活動などによって沿岸域の環境の美化と保全が図られているなど、漁業の営みの多くが沿岸域の環境を守り、生態系の維持に大きく貢献しています。
このような漁業者の活動が今後も続き、多面的機能を維持、発揮していくことが求められています。そのためにも漁業者が漁業を続けていくことが必要なのです。
本改正案は、漁業の民主化を後退させ、企業優先の漁業を行わせるものです。漁業の多面的機能に重大な影響を及ぼし、漁業者の生活を脅かし、漁村を衰退させる漁業法の改悪です。このような法案には断固反対せざるを得ないということを申し上げ、反対討論といたします。
ありがとうございました。